
春燈賞(抄)25句 自選
利根川に潮の差しくる恵方かな
初雀今朝は供米ぞつつしめよ
雪道へ踏み出す思ひ初日記
染め糸のしたたるみどり冴え返る
紐を組む駒の音色も春めけり
旗風に手末冷ゆる初薬師
針祭日のまはりきし母の墓
余寒なほ土を啄む日の雀
夕厨浅蜊いまはの息を吐き
一輪づつ殖え春蘭の三年かな
鳥どちも溺れてをるや花の中
花筵青し赤子をおよがせて
観桜の宴も終りの塩茶かな
春潮の音なく満つる南白亀川
卯の花や兎波馳す九十九里
ちりながら子犬遊ばせ花蜜柑
出来心なり列の蟻危めけり
転寝の手より逃れし団扇かな
沙羅落花一日のけじめ潔よし
卓整へ人待つばかり月見草
使ひ合ふルーペを拭ひ秋灯下
子に林檎りぼん解くごと剥きにけり
天よりの調べのごとし秋風鈴
風の日を蜘網まとひて新松子
柿熟るるあまたの雲を見送りて